Tag Archive: 長崎伝習所報告書2011

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ながさき町ねこハンドブック

ながさき町ねこハンドブック

2012年3月発行

A5サイズ・24ページ・カラー印刷

発行部数:2,000部

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 5月に旗揚げした町ねこ調査隊塾。11月には、早くも成果品の検討に入りました。情報がコンパクトに収納され、携帯が可能、場所を選ばす、片手でも見開きできるー―となれば〝ハンドブック〟――即、決定しました。

 その内容は大きく3つに分かれます。

1. 町ねこ調査の方法

 前半は、みなさんの疑問――〝調査って実際、どういうふうにやっているの?〟にお答えしています。

町ねこの見つけ方

 ごはんをキーワードにすれば、公園・寺社・飲食店街の周り等。お腹が満たされれば、冬は暖かく、夏は涼しく過ごせ、且つ、車・人通りの少ない、少し高い所を好むようです。

カルテの書き方

 毛柄だけでなく、目や鼻の色、しっぽの形もかなり個性的です。

写真の撮り方

 描き終えるまでに逃げられることはしばしば。撮影は、低い姿勢で静かに近寄ります。角度を変えて複数枚撮っておけば、自宅で描くことも可能です。

マッピング

 ねこが特定できたら、見かけた場所を地図におとします。エリア内の頭数、行動範囲がわかります。

2. 町ねこリスト・カルテ・マップ

 中盤には、ハンドブックを手にとられた方の最大の目的――〝どこにどのような町ねこが暮らしているの?〟にお答えして、写真リスト・カルテ・マップを掲載しています。さらに、会ってみたくなってもらえるよう、出会う確率を肉球の数で表しています。ところで、この4つのエリア(寺町・西坂町・長崎大学・住吉町)、特別にねこが多いわけではありません。塾生の自宅や職場の周辺といった、日常的に調査が容易なエリア、という理由からです。調査には、やはり時間が必要なのです。

3. 塾長、塾生の想い

 随所に、複数の塾生による〝ねこうんちく〟や〝想うところ〟を綴っています。

 毛柄と性格に相関はあるか?―「毛柄占い」。地方色豊かな―「猫民話」の紹介。浮世絵師のみならず殿様も商売にしていた?―「鼠よけの猫絵」。ねこトラブルの発端・原因の解説―「のらねこはじまり物語」。ペットフードの登場と繁殖の問題―「カリカリとねこ算」。想像よりも過酷な生活?―「長崎大学ねこ事情」。猫のぼやき―「ねこトーク」。なかでも「猫としっぽ」は、動物を飼ったことがある人なら誰しもが思う~偶然か? はたまた、実は言葉が分かっているのではないか?! 疑惑。そして、「長崎市の町ねこは幸せか?」では、町ねこを取り巻く複雑な人間模様が浮き彫りに…。ラストは塾長の想い―「町ねこ調査隊塾のめざすもの」で締めくくられています。

 歴史的、文化的、人とねこは密接な関係を保って暮らしてきました。これからもより良く共生していくためには何をすべきか?…是非、ご一読ください。

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北九州市ネコ実態調査隊の見学ツアー

北九州市ネコ実態調査隊見学ツアー

日程:2011年9月18日(日)

場所:意見交換会=北九州市立いのちのたび博物館内)
   ねこ調査=門司駅前・柳町周辺

参加者:塾生14名・北九州市調査委員6名

 

 6月の講演会と同じく、なぜかこの日も大雨。ねこ調査はできるかな、と心配しながら午前10時に長崎を出発。
 午後1時半に北九州八幡東区の「いのちのたび博物館」に到着。館内を見学した後、北九州市のネコ実態調査隊のみなさんと意見交換の場を持ちました。また6月に長崎にて講演していただきました山根明弘さんも、同席してくださいました。

 北九州市と長崎市、それぞれのねこ調査について報告の後、熱心な質問が飛び交いました。北九州市の調査は行政の依頼から始まり、長崎市は市民が自ら手を挙げての調査と、スタートは違います。しかし、ねこ調査のデータを蓄積し、ねこと人の平和な関係を求める気持ちは同じでした。データをどう活用していくのか、市民ボランティアと行政の関わり、など活発な議論が続き、予定していた1時間半をオーバーして、会は終わりました。

北九州市門司駅前柳町周辺のねこ調査

 雨はやっと小降りになり、柳町のねこさんに会うために、門司駅前に向かいました。

 ネコ実態調査隊の方々と山根さんに案内していただきながら、ねこ調査を見学。

 柳町は長崎市の浜口町の飲食店街と新大工町の商店街を足したような雰囲気でした。生憎の雨でしたが、車の下、小路の奥などに多<のねこを見ることができました。

 ねこ困りさんが作ったであろう『エサを与えないで』の張り紙の近くに、盛り塩のように地面に置かれたドライフードや、中華料理店の前には美味しそうなねこのエサが置いてあり、長崎と同じくねこ好き・ねこ困りの混在が見受けられました。
 環境から考える北九州市、観光から考える長崎市、立ち位置は違いますが、ねこを取り巻く環境は同じであり、お互いとても参考になる意見ばかりで、有意義な時間を過ごすことができました。今後とも交流を続けることを約束し、門司を後にしました。

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ながさき町ねこ写真展

ながさき町ねこ写真展

会期:2011年8月31日~10月2日

会場:カフエ豆ちゃん(長崎市東古川町)

テーマ:猫のいる風景、猫のいる長崎。

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 塾活動がはじまって間もなく、突如降ってわいたのが写真展の企画でした。
 定例会という形では、まだ数回しか調査に赴いておらず、カルテ用の観察写真を少数の塾生がチラホラ撮っているだけ。
 そもそも調査隊塾の活動目的から外れるのでは? などなどと協議した結果、「町ねこ調査隊塾を広く知ってもらう機会になれば」ということで走り出した写真展。

 塾長を筆頭に、何をどうしていいのやら右も左もわからない状況に筋道をつけてくださったのは、写真展の会場「カフエ豆ちゃん」のオーナー吉田隆さんでした。ちなみに吉田さんは塾生でもあります。
 調査と並行して写真展用の撮影を塾生にお願いし、迫る期日とにらめっこをしながらみんなで写真の選別を行いました。
 どれもこれも展示したい! 選別なんてできない! と叫びながらの、それはそれは楽しい選別作業でした。

 素人の写真展を見に来る人はいるのかしらと心配をしていましたが、フタを開けてみれば、来場者数延べ約800人を数える大盛況となりました。
 それもこれも、テレビ・新聞・ラジオなど各報道機関が写真展を取り上げてくださったお陰か知名度は抜群。長崎市外のみならず、県外から写真展のために来崎されたお客さまも。味を占めた塾生一同、写真展第2弾を計画中なのであります。

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公開講演会「町ねこ調査を始めよう!」

公開講演会「町ねこ調査を始めよう!」:身近にいる町ねこたちについてもっとよく知ってみませんか?

日程:2011年6月12日(日)

場所:メルカつきまち(長崎市築町)

講師:山根明弘氏(北九州市立いのちのたび博物館・学芸員)

参加者:38名

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「町ねこ調査を始めよう!」山根明弘

 私が塾長の中島由美子さんに初めてお会いしたのは、2010年(平成22年)9月にながさきペンギン水族館で行われた動物愛護フェスタの時でした。講演後の質疑応答時に「平和の町、ここ長崎で、不幸な猫をなくすにはどうしたらいいのでしょうか?」と熱心に質問をくださる方がおられました。その方が中島さんでした。

 後日、中島さんからご連絡をいただき、長崎伝習所に応募されるとの旨、おうかがいしました。そして見事、審査にパスし長崎の町ねこ調査隊塾が結成されたことをお知らせいただきました。

 2011年6月の「町ねこ調査を始めよう!」の公開講演会にご招待いただき、激しい雨のなか(長崎に来るといつも雨です)集まってくださった皆様を前にお話をさせていただきました。ちょうどこの頃、北九州でのねこ調
査は、いろいろな問題に直面していましたので、そのことについても包み隠さずお話いたしました。それがかえって、会場のみなさんの心をつかむことにつながったのでしょう、たくさんの励ましのお言葉をいただきました。

 この講演会そして、その後の北九州での塾生のみなさんとの交流会を通じて、私は地域間のネットワークがいかに重要で、そのつながりが各地域での活動の活性や、持続につながるかを知る事ができました。平和のまち長崎でのこの活動が、全国に広まってゆくことを期待しています。

 上記の文章は研究成果報告書掲載のため、山根さんから寄稿していただきました。感謝申し上げます。
 講演会当日の長崎はバケツの水をひっくり返したような大雨でした。山根さんを乗せた列車も大幅に遅れ、やや開始時刻を遅らせ、慌ただしく講演会は始まりました。
 1部「相島でのノラネコ調査」
 2部「北九州市のネコ実態調査隊」
 3部「これからの課題」
について、山根さんはとてもわかりやすくお話してくださいました。後半は質問タイム。休憩時間に会場から集めた質問を中村副塾長がまとめ、山根さんに答えていただきました。質問も多く、また回収しましたアンケート用紙にもたくさんのことが書かれていて、参加者の熱気を感じました。

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長崎伝習所平成23年度研究成果報告書(4) 塾生の感想

「長崎の町ねこ調査隊塾」に参加して

長崎の町ねこ調査隊塾に入り、あらためて猫の実態を垣間見ることができました。町ねこは自分の意志ではなく生かされている。私は猫をみると「頑張ってるね!」と声をかけてしまう。暖かい春の日射しを浴びている時は穏やかにくつろいで見えるが、極寒の冬はさぞかし辛いことだろう。しかし彼等は懸命に生きている。人間の英知で不幸な子猫を産まないよう環境を整えたい。そして保護できる施設を心から欲しいと思う。猫は私達人間にとってかけがえのない仲間なのだから。(S.E)

「町ねこ調査隊」と聞き、不思議な好奇心にかられて1年。猫に関する自由研究を塾長 、副塾長を中心に築いてきました。心がとても温かくなり笑顔が絶えない1年でした。次年度も、さらに皆さんとともに勉強したいです。(T.O)

たかが猫と思っていた町ねこは、1年間のつきあいの中で、町の人、旅人にとって癒しの存在であることに気付いた。さらに調査を広げて、町ねこの存在をより高めていきたいと思う。(M.O)

無理に親から引き離され、簡単に捨てられた子犬や子ねこたちを待っているのは殺処分です。そのことを思うと、とても辛く、心が痛みます。人間も動物も姿形が違うだけで同じ命なのです。殺処分を廃止して、動物保護センターを作りたい。そのためにはたくさんの人に呼びかけ、話し合いの場を設けたいと思います。(Y.O)

単独行動のネコたちも生活環境によっては群れて暮らすということを山根明弘さん(北九州市立いのちのたび博物館)から学びましたが、長崎の町ネコとの出会いだけでなく、ネコ仲間と群れることが出来て嬉しい塾でした。(K.K)

我が家には2匹の猫がいます。塾生の中にはたくさんの飼い猫がいてその上保護のため一時預かりをしている「つわもの」もいらっしゃいます。長崎は猫の多い町と耳にします。猫との共生を私なりに考えるために町ねこ調査隊に参加しました。私達の活動を基に野良猫を排除するのではなく、共生できる町になるといいですね。(M.K)

人目を憚ることなくねこへにじり寄り存分に撮影や観察ができたこと、また、コミュニティーとしての「町」について考えるきっかけにもなった、楽しく充実した1年でした。(Y.S)

テレビで「地域猫の活動」を知り、猫が取り持つ人の和に期待して、この塾活動に参加しました。塾では、猫に関する知識を得、身近な「町ねこ」たちを観察することで、私自身が「町ねこ」たちに成長させてもらった1年でした。
追伸:害獣ネズミの天敵である「町ねこ」の役割にも改めて着目したいと思っています。(M.T)

もともと子ねこの里親さん探しや地域ねこ活動をサポートするボランティアから、この町ねこ調査に足を踏み入れることになりました。「ふつうの人々」が町でみかけるねこにどんなふうに接しているのか、改めて気づかせてくれた調査隊塾にはとても感謝しています。塾長の中島さん、塾生の皆さん、1年間おつかれさまでした。これからも続けていきたいですね。(J.N)

山と海、古い町並みの残る長崎には、ゆったりと寝そべる猫の姿がよく似合います。町ねこ調査を通じて、猫と人とが気持ちよく共存できる社会を実現できるよう、これからも活動を続けたいと思います。(H.H)

もともと猫が大好きで参加しましたが、塾の活動を通して、「猫が好きじゃない人」「関心がない人」についても考える機会を得ました。町ねこを考えることは人と地域社会を考えることだと実感しています。(K.M)

久しぶりに塾に参加した。猫を愛する心優しい人々と会っていると他の事は忘れて猫の事だけを考えている。猫が学問になるとは今まで考えたこともなかった。動物たちも幸せに生きていけるやさしい町であって欲しい。(H.M)

当初からその困難さは予想されてはいました。生態学の研究に端を発した本調査が、ねことの共生への道しるべとして実用化たり得るのか? 非常に難しい課題への取り組みと言わざるを得ません。しかし「誰かが行動を起こさなければ状況は変化しない」という、塾長のはやる思い・熱意に動かされ、模索しながらの活動を続けています。調査データの集積が思うようにいっていない現状ではありますが、「うさぎとかめ」のかめのごとく、ゴールを目指して小さな歩みを進めていきます。(事務局=H.H)

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長崎伝習所平成23年度研究成果報告書(3) 町ねこ調査の経過について

町ねこ調査の経過について

・町ねこカルテ

2011年5月に長崎町ねこ調査隊塾が発足してお互いの顔合わせが済み、各塾生の「ねこエピソード」を述べ合ったりして連帯感を高めたあと、いよいよ「町ねこ調査」なるものの実際を定例会で取り上げたのは6月4日のことだった。できあがったばかりの「ながさき町ねこカルテ」が塾生に配布される。A5横サイズのカードの左側にはねこの名前や性別、記録場所などの記入欄とメモスペース、右上にはねこの大きさやしっぽの長さ・太さ、毛色・毛柄などの記入スペース、そして右下にはひときわ目を引くねこの顔と体のようすを描き込むための「塗り絵」欄。

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【町ねこカルテイメージ】

「これさえあれば、誰でも、どんなねこでもきっと識別調査ができます」――とは言っても、これまでの各塾生のねこへの関わり方はさまざま、20匹以上の保護ねこを抱えて獣医顔負けの知識を持っている塾生もいれば、これまで特にねこを飼ったことがない塾生もいる。「最低限これだけは共有しておこう」と作った資料は、(1)ねこの毛色・毛柄の表し方、(2)細部の特徴への注目のしかたにポイントを絞った。

・ねこの細部に注目する

「茶色の縞々のねこは、黄土色の地に赤茶の縞を持つ〈チャトラ〉と、薄茶色の地に焦茶の縞をもつ〈キジトラ〉がいる」「黄・茶・黒の3色が入り混じった複雑な模様のねこを〈サビ〉という」「三毛猫のぶちは手足や顔・胴のどの部分にどんな色が入っているだろうか」「チャトラの額にはM字の縞か平行縞かどちらがあらわれているだろうか」などなど、実際の長崎の町ねこを撮影した写真をもとに、みんなでわいわい話しながらチェックしていく。

「あら、うちの前飼っていた子にそっくり」「この子は鼻の部分のぶちで器量が台無しねえ」「ひとことで〈三毛〉と呼んでいたけど、一匹一匹柄がこんなに違うもんかね」。写真をカルテに描き込んでいくうちに、ねこの体の隅々にまで注意を払うようになっていく。しっぽの長さは? 太い?細い? どこかに特徴的な柄は? この模様はいったいなに色の毛が集まって表われるのか? おなかの白い部分はどこまで?

・カルテを持ってまちに出る

ひとしきりカルテと格闘してから、いよいよ実地に繰り出した。場所は市民会館から寺町周辺、ねこがすぐに見つかるかどうかが懸念されたものの、すぐにとびきりフレンドリーなクロ、サビ、シロたちに出くわす。写真撮影とカルテ作成の2人1組で分担のはずだったが、まずはみんなねこをナデナデ……ナデナデ……ナデナデ……と、ねこ好きぶりを各自遺憾なく発揮。

結局最初のねこたちを20分近くもかまった(かまわれた?)あと、次のねこ探しへと移動して、またそこでもナデナデして写真を撮ってカルテを描いて、都合1時間ほどかけて15匹ほどのねこたちに出会ったのが、町ねこ調査隊塾での初町ねこ調査だった。

・ねこを「識別」する

大事なのはその次の回、6月19日の定例会。「前回識別してカルテにした町ねこを、今回も識別できるか?」 それができてこその「個体識別」であり、継続調査としての価値が出てくるのだが、果たしていかに――と、これまたうまい具合に、4日の調査の時に顔だけ記録したら逃げてしまった三毛の子ねこのカードと、目の前で走り回っている三毛の子ねこの柄がぴったり重なった。「おお!」と感動する間もなく、急いで体と手足の特徴をカードに追記する。写真班も何枚か三毛の写真を記録に収めて完成した町ねこカルテは、後日開かれた「ながさき町ねこ写真展」でも展示された。

効果が実感できればしめたもので、この日はそのまま延命寺まで足をのばし、識別しづらいキジ・サビねこの多さにたじろぎつつも、カルテの枚数は着実に増えていった。

・データを蓄積する

秋頃までには、調査技術にも次第に磨きがかかり、単独で写真撮影・カルテ作成と継続観察を行なう塾生もぼちぼち現れるようになった。その結果の一部は今年度の塾成果のひとつである『ながさき町ねこハンドブック』に掲載されている。

2011年度末現在で、ある程度の分量の調査データが蓄積できた地区は寺町周辺、西坂公園周辺、住吉町、長崎大学文教キャンパスの4か所、1回~数回の単発調査を行なった地区は伊良林、新大工町・桜馬場・鳴滝周辺、丸山町・寄合町・中小島周辺、十人町・中新町・館内町周辺、ダイヤランドの一部、曙町、青山町などとなっている。

・町ねこ調査から見えてきたこと

これらの町ねこ調査を通じて見えてきたことはいくつかあるが、何よりも重要な点は「調査をすることによって初めて、自分が今までいかに漠然としか町ねこを見ていなかったかを実感した」という点である。塾生は(濃淡こそあれ)ねこは好きであり、みな自分なりに関心を持ってこれまでも町ねこに目を向けてきたつもりだったが、調査のために路地を一本一本入り、家と家のすきまをのぞき込みながら歩くことで、思いのほか豊かな町ねこの世界を垣間見ることになった。そしてまたその町ねこの世界は密接に私たち人間の生活空間とつながっていて、ねこ好きもそうでない人も町ねこも否応なしに併存していることも痛感させられた。

裏を返せば「町ねこ調査をする」ということは、そうした「人間とねこは同じまちのなかでともに暮らしているということを改めて考え直す」機会だと言える。町ねこのカルテを1枚1枚描くことを通して、それぞれのまちの人間とねこの関係は、ありありと見えてくる。丸々と太って幸せそうなのか、毛並みもやつれお腹をすかせてうろついているのか。たくさんの子ねこが生まれたと思ったらいつの間にかいなくなるまちもあれば、迷い込んだノラネコに優しく手をさしのべるまちもある。ペットボトルやねこよけの並ぶまちなみのすぐ隣には、きれいに手入れのされたフラワーポットのそばでねこがのどかに昼寝をするまちなみが連なっていたりもする。

少し大げさな言い方をすれば、「町ねこは、その町を映す鏡である」ということになるだろうか。願わくは、すべてのまちで人とねことが宥和して暮らすことができますように。

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長崎伝習所平成23年度研究成果報告書(2) 活動記録

2011年5月13日(金)長崎県勤労福祉会館
長崎伝習所「塾」開所式
塾生顔合わせ
2011年5月28日(土)アマランス会議室1
公開講演会、町ねこ調査の事前準備
2011年6月4日(土)アマランス会議室1
町ねこカルテの説明
寺町周辺の町ねこ調査(第1回)
2011年6月12日(日)メルカつきまち会議室
公開講演会「町ねこ調査を始めよう!」
2011年6月19日(日)中央公民館第3研修室
講演会について意見交換
寺町周辺の町ねこ調査(第2回)
2011年7月2日(土)アマランス会議室1
町ねこ写真展の提案
寺町・中通りの町ねこ調査(第3回)
2011年7月17日(日)市立図書館研修室1~3
オーストラリアRSPCAの活動についてのレクチャー
町ねこカルテの描き方を習熟
2011年8月6日(土)アマランス会議室1
北九州市見学の下見報告
寺町周辺町ねこ調査(第4回)
2011年8月10日(水)ランタナ会議室
町ねこ写真展の写真選考
2011年8月12日(金)カフェ豆ちゃん
町ねこ写真展の写真最終選考
2011年8月21日(日)アマランス会議室1
町ねこ写真展、北九州市見学ツアーについて話し合い
2011年8月29日(月)カフェ豆ちゃん
町ねこ写真展の展示作業
2011年8月31日(水)~10月2日(日)カフェ豆ちゃん
「ながさき町ねこ写真展」開催
2011年9月3日(土)アマランス会議室1
町ねこ写真展の経過報告
長崎大学文教キャンパス内におけるねこ調査について報告
2011年9月18日(日)北九州市
北九州市ネコ実態調査隊の見学と意見交換
2011年10月1日(土)市立図書館研修室1~2
町ねこ写真展について意見交換
北九州市への見学ツアーの報告
2011年10月16日(日)アマランス会議室1
寺町周辺・新大工町周辺の町ねこ調査(第5回)
2011年11月5日(土)アマランス会議室3
「ながさき町ねこハンドブック」について話し合い
寺町周辺の町ねこ調査(第6回)
2011年11月20日(日)アマランス会議室3
「ながさき町ねこハンドブック」について話し合い
寺町周辺の町ねこ調査(第7回)
2011年12月3日(土)アマランス会議室1
「ながさき町ねこハンドブック」の割り付け
伝習所まつりの企画について話し合い
2011年12月18日(日)アマランス会議室3
「ながさき町ねこハンドブック」について
伝習所まつり企画と当日の運営について
塾の継続申請と次年度の企画について
2012年1月7日(土)市立図書館研修室1~2
九州女子大学内キャンパス猫愛護の会さん来訪
「ながさき町ねこハンドブック」の原稿を入稿
2012年1月22日(日)アマランス会議室1
「ながさき町ねこハンドブック」修正作業
これまでの塾活動について意見交換
2012年2月4日(土)アマランス会議室3
「ながさき町ねこハンドブック」の校正
研究成果報告書について話し合い
2012年2月18日(土)アマランス会議室3
「ながさき町ねこハンドブック」最終校正
伝習所まつりについて打ち合わせ
2012年3月3日(土)ランタナ会議室
伝習所まつりについて打ち合わせ
2012年3月20日(祝)ベルナード観光通り
長崎伝習所まつり
調査内容パネルの展示、クイズなどを実施
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長崎伝習所平成23年度研究成果報告書(1) 塾長コメントと塾概要

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「長崎伝習所」平成23年度研究成果報告書ができあがりました。「長崎の町ねこ調査隊塾」のほか、「ナガサキポルトガルシルシル塾」「長崎ビューポイント探訪塾」「坂のまち長崎なのに自転車塾」「孫文・梅屋庄吉と明治大正長崎事情塾」「在京長崎うまかもん塾」「『エコ名人を探せ』塾」「川さるく森川里海塾」「長崎洋館音楽舞踏塾」の研究成果報告、それに、長崎伝習所つながり事業(まちコツアカデミー事業・まちづくりリーダー育成事業・特別講座(自分新化講座))の成果報告など、A4判152ページからなります。市民活動センター「ランタナ」(長崎市馬町21-1)で配布しています。

そのなかから、町ねこ調査隊塾の部分を抜粋して、何回かにわたってご紹介します。初回は、この塾活動の改めての紹介として、塾長コメントと塾概要から。


■塾長コメント:<少し長い前置き>

ねこを飼ったこともなく、とくべつにねこ好きでもない私でしたが、この1年あまりですっかり“町ねこ”に魅せられてしまいました。ねこは単にねこの世界だけに生きているのではなく、その背景には人の暮らしがあります。ねこと言えどもその奥は深く、町ねこを通して、これまで気付かなかった人と町の新しいつながりを見つけることができました。

「町ねこってなに?」「ねこを調査する? 何のために?」と、よく聞かれます。ねこが好きで集まった塾生も、たぶん同じ気持ちだったと思います。町を自由に歩き回るねこたちの生態を調査する、全国でもほとんど例をみない新しい試みに挑む私たちをリードしてくださったのは、ねこ調査の先達である山根明弘さんです。山根さんをお招きしての公開講演会「町ねこ調査を始めよう!」は、その後の塾活動の指針になりました。ねこ調査や塾活動の詳細については、この後に続くページを読んでいただければと思います。

塾がスタートしたばかりの頃、塾生にとってねこはかわいいだけの存在でした。しかし1年の活動を経て、塾生の多くはねこと地域の関係に思いを巡らすようになりました。そして、長崎の町ねこ調査隊塾は、長崎市以外の活動ともつながり始めています。ねこと人が共に平和に暮らす町をめざして、ねこのようにしなやかに、これからも活動を続けて行きたいと思います。

■塾の目的:<町ねこ調査から見えてくるもの>

・町ねことは?

まちなかで見かけるねこのことです。いわゆるノラネコのほか、家の中と外を行き来する飼いねこも含みます。車の入らない狭い路地、急な坂道や階段など、長崎に点在する独特のまちなみの中を、町ねこたちは自由に歩き回ります。

・町ねこ調査は何をするの?

まず、調査をするエリアを決めます。つぎに1頭、1頭のねこの特徴をカード(ながさき町ねこカルテ)に記入します。それぞれのねこを区別(個体識別)できるようになったら、そのねこを見つけた場所を地図上にマークします。ある程度の期間これを続けていくと、そのエリアのねこの頭数と行動範囲がわかります。

・「餌やりさん」と「ねこ困りさん」

長崎でよく見る車の入らない狭い路地、急な坂道や階段は、ねこにとって安心安全な場所です。そこにはとりわけたくさんのねこたちがいて、ねこスポットになっています。このねこスポットには、ねこをかわいがり餌を与える「餌やりさん」がいます。が、一方には、ねこの糞尿に困っている「ねこ困りさん」もいます。餌やりさんとねこ困りさんの対立は、時としてやっかいなご近所トラブルになります。

・ねこと人が共に平和に暮らす町

ねこは人から餌をもらわなければ生きていけません。人にすがるねこの命を守りたい餌やりさんとねこのいない快適な住環境を望むねこ困りさん、相反する気持ちのどこかで折り合いを付けられないか、その方法をさぐるために、町ねこ調査を生かしたいと考えます。「長崎はねこの多かけん」とよく言われます。それは小さな命を大切にするゆとりが長崎の町にあるからだと思います。このゆとりを生かした町づくり、それも長崎の町ねこ調査隊塾の目的です。

■塾の研究・活動内容

・町ねこ調査(長崎市内における町ねこの調査)

調査場所:寺町周辺、西坂公園、長崎大学構内、住吉町

・公開講演会「町ねこ調査を始めよう!」

日程:2011年6月12日(日)
場所:メルカつきまち(長崎市築町)
講師:山根明弘氏(北九州市立いのちのたび博物館学芸員)

・ながさき町ねこ写真展

日程:2011年8月31日(水)~10月2日(日)
場所:カフェ豆ちゃん(長崎市東古川町)

・北九州市ネコ実態調査隊見学ツアー

日程:2011年9月18日(日)
場所:北九州市立いのちのたび博物館内・門司駅前柳町周辺

・広報活動

『ながさき町ねこハンドブック』作製
長崎の町ねこ調査隊塾のブログの立ち上げ
メールマガジン「町ねこ通信」配信

・新聞各社による報道
  • 2011.5.27『毎日新聞』「街の猫 調査を開始」
  • 2011.6.9『長崎新聞』「町ねこ調査を始めよう!」
  • 2011.8.24『毎日新聞』「気ままに愛らしく 町ねこ写真展」
  • 2011.8.31『長崎新聞』「町ねこの魅力伝える。きょうから写真展」
  • 2011.9.1『読売新聞』「町ねこ写真展 来月2日まで」
  • 2011.9.2『西日本新聞』「人との共存目指し写真展」
・テレビ、ラジオによる報道
  • 2011.8.31 NBC長崎放送
  • 2011.8.31 NIB長崎国際テレビ
  • 2011.9.1 NHK長崎放送局
  • 2011.9.2 KTNテレビ長崎
  • 2012.2.18 NBCラジオ「UP×3」

■塾活動の成果

・町ねこ調査から広がる視点

塾生の視線は、愛らしい存在としてのねこだけではなく、ねこを取り巻く社会環境にも注がれてきました。町ねこの生態調査と合わせて、ねこに対する人の意識調査を始めようとしています。

・命の教育へ

子どもたちにこそ、町ねこ調査を体験して欲しい。ねこの生きる姿を観察することは、命について考えることにつながるのではないか、そんな意見も出てきました。

・ネットワークを結ぶ

 町ねこ調査に関心を寄せる人たちが、少しずつ増えてきています。長崎から町ねこ調査の情報を発信し、そのネットワークを広げて行きたいと思います。